※ネタバレあり
先日、「わが魂は輝く水なり」(シアターコクーン)に行ってきました。
野村萬斎さん、尾上菊之助さんが出演、演出が蜷川幸雄さんです。
以前、「オイディプス王」を観た時の野村萬斎さんの演技がとても印象に残り、今回とても楽しみにしていました。
私の感性で捉えたことをちょこっと書いてみたいです...。
舞台いっぱいに広がる大きな桜の木(?)からすっと現れる亡霊の五郎、尾上菊之助さん...妖艶なしっとりとした雰囲気に思わず息をのみ、身震いするほどの美しさです。
他の武士達とは次元が違うような清さがあり、五郎の空間だけが汚れがないのです。
白い衣裳がそれを一層際立たせていました。
野村萬斎さんの父実盛は猛々しいというよりは武勇な英知な武士といった感じで、生きてきた長い年月の間にこびりついた汚れた垢を感じ、それを噛みしめ、少しずつ落としながら生きているといった風情です。
野蛮で血なまぐさい荒々しい狂ったような思考、戦いを冷めた目で観つつも、人間はこの歴史を幾度となく積み重ねて成長し今に至っているのだろうとも思います。それでもまだ醜い戦いはあるのですが...。
拝見しながら何か「乾き」を感じたのは舞台セットから来るものでしょうか?
何が枯渇しているのか掴めないのがもどかしいです...。
唯一、澄んださざ波を見つけほっと安堵し、あらためて水の存在を考えてみたりします。
飲料の水ではない、水とは...。
とにかく、私は源平合戦の歴史には全くもって疎いです(笑)歴史的観点のお話も一切できません。
が、このお話、単なる源平合戦ではなく、安保、学生運動、浅間山荘事件といったものが描かれていると後から知ってそういうことだったのかと...。ちなみに私は当時存在してはいないので書籍や映像で得たことしかわかりません。
今は平和で安泰な時代でありますが、一人一人が本当にそう思って過ごしているのでしょうか...。
言いたいことを叫びたいことをぐっと堪えて飲み込んで平静に生きているような...それはそれで少々不気味でもあったりします。